note.comでルノルマンカードについて紹介した際、マドモアゼル・ルノルマンのことに触れたのですが、もっと教えてというリクエストが来たので、ここにまとめておきます。
本名:マリー・アンヌ・アデレード・ルノルマン
(Marie Anne Adélaïde Lenormand)
生没年:1772年5月27日 – 1843年6月25日
出身地:フランス・アランソン(Alençon)

マドモアゼル・ルノルマンは、ナポレオン時代のフランスで最も有名だった占い師のひとり。
とくに上流階級の間で人気があり、彼女のクライアントには以下のような歴史的著名人も含まれます:
・ ジョゼフィーヌ(ナポレオンの妻)
・ ロベスピエール(※1)
・ マラー(※2)
・ サン=ジュスト(※3)
※1 フランス革命を代表する政治家・思想家のひとりで、特に「恐怖政治(テールール)」の中心人物
※2 フランス革命期の急進派の指導者・医師・ジャーナリスト・政治家。「浴槽で殺された革命家」としても歴史に残っている
※3 フランス革命期における最も若く、最も過激で、最も神秘的な革命家のひとりです。ロベスピエールの忠実な同志であり、「革命の天使」あるいは「革命の死神」とも呼ばれた。
「ルノルマンカード」は彼女の名前を冠していますが、彼女が作ったものではありません。彼女の死後にカードが出版され、占いスタイルや名声にちなんで作られたカードデッキということになります。
彼女は「タロット」「占星術」「手相」「数秘術」など、さまざまな占術を駆使し、とくにカードリーディングで多くの支持を得ました。
現在のルノルマンカードの原型は、ドイツのボードゲーム「The Game of Hope(希望のゲーム)」で、1799年頃に初版が登場したと言われています。
マドモアゼル・ルノルマンが活躍したのは、まさにフランス革命(1789年)からナポレオン帝政(1804年〜)という大変革の時代。王政が崩壊し、共和制、恐怖政治、そして皇帝ナポレオンへと政治体制がめまぐるしく変化していました。多くの人々が将来への不安を抱き、占い師の助言を求めたことは容易に推測できます。
このような混乱の中で、彼女の「未来を読む力」は、単なる娯楽や占いの枠を超えて、政治的・宗教的に注目される存在となったのです。しかし、ルノルマンはその的中率の高さと、当時の要人との関わり、忖度ないリーディングから、時には危険視され、複数回にわたって投獄されています。
たとえば、彼女は革命期にロベスピエールやマラーといったジャコバン派の人物と接触しており、未来を予言したとされます。しかし、革命政府の過激さが増す中、「反革命的な予言をした」として一時的に拘束されたと伝えられています。
忖度ないリーディングとして、ルノルマンは、ナポレオンの失脚を予言したことにより、警戒され投獄されたとする記録があります。また、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌとの関係も深かったため、その影響力を警戒された可能性もありますね。
さらに、ルノルマンは多くの政治的予言を含んだ書籍を執筆・出版しており、それが政府にとって都合の悪い内容だと見なされ、たびたび検閲や投獄の対象となりました。当時の上流社会では、彼女のリーディングが戦略や政略結婚の判断材料として使われていたという説もあります。彼女はただの占い師ではなく、政治的助言者のような立ち位置を築いていたのです。
ルノルマンは1843年に71歳で亡くなりました。
その死後も彼女の名は伝説として語り継がれ、ルノルマンカードの名前に残ることで不滅の象徴となりました。